腱板断裂
その他
2018年5月8日
肩が上がらなくなり痛みを訴える方の中に、腱板断裂の方がいらっしゃいます。強い外力が必要になるので主にけがでなりますが、中にはインピンジメント症候群という挟み込みが長患いして腱板損傷から移行する方もいらっしゃいます。また五十肩の原因の一つである関節包の拘縮と診断されるとリンデロン(ステロイド)とキシロカイン(局所麻酔薬)を注射する事があるのですが、頻回のステロイドの注射も腱が脆くなることが知られています。
(進行したばね指の際に引っかかっている箇所に注射することがあり、ケナコルトというステロイドを打つのですがこれも打ちすぎると腱が脆くなり皮下断裂を起こすことがあります。また骨も脆くなるので好発する中年期以降の女性で骨粗鬆症がある方はその点に注意する必要があります。)
腱板が行っている作用は次の通りです。
- 肩の安定性を高める。
- 腱板を構成する筋肉の一つである棘上筋は外転(横に上げる動作)で重要な働きをする。
- 肩と上腕骨が当たらない様に骨頭の引き下げを行う。(特に肩甲下筋)
断裂した状態ではこれらの作用が失われているので次の事を行います。
- 2.3に準じます。
- 棘上筋と同じ作用をする三角筋をチューブトレーニングで鍛えます。(代償作用)
- 腱板を構成してはいないのですが、骨頭の引き下げを行う大円筋という筋肉をチューブで刺激します。
この時急に負荷をかけるとかえって痛みが出てしまいますので、段階を踏んでトレーニングします。チューブがきつい方にはアイソメトリックという最も負荷の少ない所から始めます。
腱板が断裂していると上がっても90度位です。ここから保存療法である程度日常生活に支障がないところまで持って行くには代償作用をする筋のトレーニングが必要になります。
目標は前に上げる屈曲が170度、横に上げる外転が160度くらいです。(正常な可動域はともに180度です。)
これは3か月が目途になります。通院は1~2週間に一度でその間はご自宅でのトレーニングになります。治療はフォームの確認や肩が上がらないことにより他の箇所に不調がでることがあるのでそこを治療します。具体的には肩をすくめる感じで上げるので僧帽筋という大きな筋肉が張ったり、体ごと曲げるので腰痛が起こったりする事が考えられます。